美術館講座は、美術の歴史や作品の見方、制作技法などについて、一般の方々を対象にわかりやすく解説する催しです。毎年春と秋の2回、それぞれ異なったテーマを設けて、連続講座形式で実施しています。
平成14年秋の美術館講座は「近代科学と西洋美術」と題し、14世紀のルネサンスから20世紀にいたる西洋近代美術の流れに見る、近代科学の影響をテーマにお話しいたします。産業革命をもたらし、人間のあり方や世界の認識を大きく変えた近代の科学。それは中世の“神”中心の世界観に訣別した近代の合理主義精神のたまものであり、同じ精神のもとに発展した近代美術とは双子の兄弟と言っても良い関係にあります。作品の背景となった思想的・技術的な事柄を知ることによって、近代美術に対する理解度も大きく増すことでしょう。
今回の講座では多岐に及ぶ影響関係の中から、主だった4つのトピックスを取り上げ、具体例を挙げながら解説いたします。
第1講「絶対空間の成立」
西洋近代の世界観は、デカルトやニュートンによって定式化された「絶対空間・絶対時間」の理念に基づいています。それは“神”を中心に置く同心円的な世界観から、中心も果てもない、どこまでも均質な世界観への転換でありました。美術の世界ではニュートンたちよりも200年以上も早く、ルネサンス時代の数学的線遠近法の成立によって、神を中心としない絶対空間が確立しています。ここでは西洋絵画の空間表現の思想的意味を軸に、近代の宇宙観、人間観についても考察します。
第2講「色彩の王国にて」
西洋近代美術を特徴づける要素のひとつに「色彩の自立」があります。ゲーテの色彩論に代表される近代の色彩研究は、無限の色彩を体系化し、色彩と人間心理との関係を明らかにしました。そして物体に固有の色彩と、網膜に映った色彩とが異なることを示しました。さらに画材の発達が、これまでになかった新しい色彩を生み出し、そこから新しい表現が導かれました。この講座では19世紀半ば以降の近代美術の展開を、色彩の話題を中心に据えて追いかけてゆくことにします。
第3講「解体する世界」
19世紀末から20世紀初頭にかけての科学の進歩は、皮肉なことに、合理主義と人間中心主義で固められた近代の世界観を揺るがす結果を招きました。ダーウィンの進化論、フロイトによる無意識の発見、ラザフォードによる原子核の破壊、ゲーデルの不完全定理などがもたらした衝撃は、美術の世界では抽象絵画の登場や、ダダをはじめとする反芸術の動きなどに反映しています。ここでは20世紀初頭の諸動向を例に、近代の価値観の大きな転換点をクローズアップします。
第4講「メディアの身体」
活版印刷、新聞、写真術、無線通信、TVにビデオ、そしてインターネット。近代はまさにメディアの時代と言えるでしょう。メディアの発達は社会構造を変え、世界の大きさを変え、さらには我々の身体のあり方をも大きく変えてしまいました。この講座では主に20世紀の美術を例に挙げながら、メディアの発達によって変貌した人間のイメージを美術を通して考察し、そこから未来の人間と社会の姿についても考えてゆきたいと思います。
■講座スケジュール
11月3日(日) 午前10時半〜12時 第1講「絶対空間の成立」
午後1時〜2時半 第2講「色彩の王国にて」
11月10日(日) 午前10時半〜12時 第3講「解体する世界」
午後1時〜2時半 第4講「メディアの身体」
■講 師 当館主任学芸員 平田 健生
■会 場 滋賀県立近代美術館 講堂
■定 員 200名
■受講料 無料
■申し込み方法
受講を希望される方は、郵便往復ハガキに住所・氏名(ふりがなも)・電話番号を明記の上、平成14年10月15日(火)までに、滋賀県立近代美術館「美術館講座」係まで申し込んで下さい。電話による申し込みは受け付けませんので、ご注意下さい。(終了)
受講決定者には締め切り終了後、折り返しその旨を通知いたします。なお受講希望者が相当多数になった場合、会場の都合などのため、やむを得ず抽選で受講者の選抜を行うことがありますので、あらかじめご了承下さい。
■宛 先 〒520−2122 滋賀県大津市瀬田南大萱町1740−1
滋賀県立近代美術館「美術館講座」係
■過去の美術館講座の記録 こちらをご覧下さい