当館では毎年夏休みに、ボランティアスタッフの協力のもと、様々な教育普及イベントを開いています。今年度は美術館友の会との共催で、小・中学生向けの『2つのせかいでコ・ン・ニ・チ・ハ』と『ゲームであそぼう! せかいのアート』、そして大人向けの『探偵アートスクープ!』の3種類のイベントを実施いたしました。
7月22日(日)、28日(土)、29日(日)の3回実施した『2つのせかいでコ・ン・ニ・チ・ハ』は、ボランティアスタッフたちが4月から延べ11回もの会議を開いて練り上げていった手作りのイベントです。今回のテーマは“コミュニケーション”。イベントのみかけは昨年度の『ゆけゆけ!フシギ探検隊』と同様、子供たちとスタッフがチームを組んで美術館の内外を探検するオリエンテーリングの形を取っていますが、その細部にはスタッフが知恵を絞って考えた、様々な種類のコミュニケーション体験が盛り込まれています。
2つのチームに分かれた子供たちに、一人一人封筒が配られるところからイベントは始まりました。中を開けると、それぞれ違う数字と言葉が書かれた紙が入っています。実は数字の順番に言葉を並べて読み上げると、これから子供たちが行う探検の予告編が現れる仕掛けなのです。その予告を聞いて、どこからともなく黒ずくめの怪盗が登場!
美術館のどこかに隠された秘宝をどちらが先に手に入れるか、これから怪盗と子供たちの知恵比べが始まるのです。怪盗が落していった暗号はとりあえずしまっておき、子供たちが直面した最初の試練は、浮き彫りになった文字を手探りで解読し、意味のある言葉を見つけるというもの。見事正解した子供たちの前に、美術館のどこかにある「大地の国」と「風の国」へと向かう道が開けました。
2つのチームがそれぞれ、ギャラリーにある大地の国と風の国に向かってみると、2つの国の間には大きな壁ができており、国をおさめる神官さんが2人とも困っていました。壁を取り除くためにはあちこちに散らばった、呪文の言葉が書かれた石板を集めなければなりません。神官さんの頼みを聞いて石板さがしの旅にでかけた子供たちは、美術館のあちこちで様々な人物(?)に出会います。みんなそれぞれ悩み事がある様子。頼みを聞いて、お礼に石板をもらいましょう。文字を読めない白ヤギさんの代わりに、絵で手紙を書いてあげたり(“あした”って絵で描けるかな?)、悲しい歌しか歌えない歌姫さんに、楽しい心とは何か伝えてあげようとしたり(楽しい時にはきみは何をしたくなるかな?)、展覧会の絵の中から出てきたお姐さんが探している絵を、どんな絵なのか記憶をたよりに見つけてあげたり。どの依頼も、ふだん当たり前のように行っている「コミュニケーション」を再度見つめ直そうというものでした。また探検の途中で、怪盗が落していった暗号を解読し、怪盗が盗んだ石板の文字を取り戻すことも忘れてはなりません。
美術館中を探検しても、最後の石板だけが見つかりません。途方に暮れる子供たちの前に再び怪盗が出現! 最後の石板は怪盗が持っているのです。そのうえ、子供たちがチームごとにせっかく集めた石板の文字は、実は怪盗によって入れ換えられていたのです。ショックを受ける子供たち。けれども子供たちの熱意に負けた怪盗は、言葉を使わずに入れ換えられた文字を元どおり直すことができれば、最後の石板を渡すと約束してくれました。イベントのクライマックスは、自分たちの身体を使った人文字で、石板の文字をもう一方のチームと伝え合うこと。見事にすべての石板を手に入れ、穴のあいた石碑にはめ込むと呪文が完成しました。みんなで一斉に呪文を読み上げると、壁が動き出し
、大地と風の2つの国はようやくひとつになります。神官さんからお礼にもらった秘宝とは「植木鉢を使った風鈴作りのキット」。大地と風からの贈り物を、みんなで楽しく作って持ち帰りました。
8月11日(土)と12日(日)に実施した『ゲームであそぼう! せかいのアート』は、毎年の定番となったアートゲーム(米国で開発された、ゲームを通して作品鑑賞のテクニックを身につける教育プログラム)のイベントです。今回実施したのは、(1)名画の登場人物たちとのジャンケンゲーム。(2)2枚の作品カードの共通点を見つけるマッチングゲーム。(3)ランダムに示される形容詞を見て、その形容詞にイメージがぴったりの作品を選び出すゲーム。(4)画家からの手紙(もちろん偽物)を読み上げて、その画家の絵を複数の作品の中から探し出す推理ゲーム。(5)自分の背中に貼られた図版が何番の作品か、他の参加者に○×で答えられる質問をして当てるゲーム。(5)作品の一部分を隠した図版を見、作品にまつわるエピソードを聞いて隠された部分を想像して描くゲーム。の6種類。このうち(4)〜(6)は今回初めて実施した新作ゲームでした。
中でも子供たちに人気だったのは、トランプのインディアンポーカーからヒントを得て作った(5)番のゲーム。自分だけが背中の作品が見えないので、みんなあせることあせること。でも子供たちの集中力は素晴らしく、5分後にはみなしっかり作品を当てることができました。また、探偵気分で作品を比べる(4)番のゲームも、名探偵コナンに親しんでいる現代の子供たちにとっては興味深いものだったようです。
9月1日(土)に実施した唯一の大人向けイベント『探偵アートスクープ!』は、昨年実施したイベント『美術と楽しくつきあうには?』で好評だった調査ゲームをさらにパワーアップしたもの。全国的にも珍しい、作品鑑賞のワークショップです。スタッフ1名を含む数名の参加者でチームを組み、あらかじめ渡された「探偵依頼書」に基づいて企画展示室に展示中の作品を調査し、その結果を皆の前で公表してもらいます。作品調査というと堅苦しい印象がありますが、某テレビ番組をもじったタイトルでわかる通り、依頼文もマヌケな口調で書かれたお笑い調のものであり、チームで愉快におしゃべりしながら作品を観察する楽しいイベントになりました。調査だけでなく、子供向けのアートゲームで好評だった『インディアンポーカー○×ゲーム』なども取り入れて盛り沢山の内容で実施したこともあって、イベント終了後も参加者の興奮はさめやらぬ様子でした。大人向けのワークショップはとかく参加者が集まりにくいものですが、今回の参加者の感想からは確かな手応えが感じられ、スタッフたちも今後の展開に向けての自信を深めることができました。