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館長所信『開館15周年を迎えて、さらに』

(平成11年6月・第59号掲載)

館長 榮樂 徹


 皆さま、こんにちは。

 滋賀県立近代美術館は、本年、開館15周年を迎えることができました。開館のための準備期間を含めますと20年になります。永いようで短い、短いようで永い年月です。この間、当館は無事に、進んでこれました。これも一重に、館運営に携わってこられた諸先輩の方々、友の会の方々、当館まで御足を運んで下さった滋賀県民や美術愛好者の方々をはじめ、数限りない皆さまの御陰です。紙上を借り心より深く厚く御礼もうしあげます。

 現在は、ところで、日本中、何処を見回しても、景気が良くありません。不況々々です。美術館も、もとより、例外ではありません。運営予算の右下り、入館者数の減少、などなど。不況の大きな波のうねりは当館にも及んでいます。

 日本での美術や美術館は、しかし、基本的に、何時も社会の荒波を受けてきました。近年、日本では、美術館という<箱>の建設を競っています。<箱>の<中身>は、しかし、旧態依然として変化が、それほど認められません。むしろ、何時も荒波を受けつつ、美術や美術館は、少しずつ、少しずつ、花開いてきました。それが、私の実感です。美術や美術館は、だから、不況(逆境)の時こそ、さらに花咲かすべきだ、と改めて再認識し努力を重ねる決意をしております。金が無い時は知恵を出せ、と言います。当館の職員は、一致団結して、知恵を絞りつつ、地道に、館運営に携わっています。私達の知恵は、しかし、限度があります。2年先は、21世紀、です。皆様の、これまでの御厚情に併せ、御知恵、御叱正も、これから末永く賜りますよう、紙上を借り、切に御願いもうしあげます。

 滋賀県立近代美術館は、昭和59年8月26日開館からずっと、美術作品収集、美術展覧会開催、美術情報普及、美術館施設整備の四つの事業を行いました。さらに、これからも、四つを継続します。

 美術館は、<箱>(建物)も大事です。しかし、仏(建物)作って魂(美術品収集)入れずでは誠に困ります。当館の<魂>は三つ。第一は、滋賀県出身か滋賀県在住の作家の作品。日本画の山元春挙と小倉遊亀、洋画家の野□謙蔵、染織の森□華弘と志村ふくみ、などが中心。近江八景など、琵琶湖をはじめ風光明眉な近江の自然や風物を主題とした作品も同じ扱いです。第二は、第一の小倉遊亀を起点とする日本美術院の画家たちの作品。第三は、国内に限定せず、国際的に私達が生きている現代の美術(主として第二次世界大戦後のアメリカの現代美術作品)。以上の三本柱に沿いつつ、現在までに収集した美術作品は、郷土美術・日本画620点、現代美術289点、併せて909点(平成11年3月末日現在)。数は、それほど多くありません。三つの収集方針を、頑なに守り、各作品が一つ一つ意味のある集合体(コレクション)です。美術作品収集は、しかし、これ切りで
は大弱りです。ますますの充実を目標に、永々の期間と多くの予算をかけ、作品収集に努力する所在です。

 美術展覧会開催も美術館では重要な仕事です。当館では、三つの方針で収集した所蔵品を常設展示室1(郷土美術、日本画)、同2(現代美術)で、展示替を順次しながら紹介しています。また企画展示室では、三つの収集方針を意識しつつも、必ずしもそれに拘束されず、幅広い視野に目配りしながら、独自で質の高い展覧会を企画し開催しています。開館以来、約120ほどの企画展を数え、滋賀県民や美術愛好者の要望に応えてきました。なかでも当館では、郷土美術・日本画に関する企画展に力を入れてきました。「小倉遊亀回顧展」「山元春挙展」「茨木杉風展」「野口謙蔵展」「三橋節子回顧展」「岸竹堂展」「近江八景展」「湖国滋賀と京都画壇」「滋賀の洋画」「滋賀の日本画」「16・17世紀の近江の大画」「現代の近江八景屡」「志村ふくみ展」「滋賀の工芸 伝統のやきもの」「創耀技展」「近江路の観音さま」等々です。さらに、これからもこの路線を受け継ぎます。

 一方、現代美術の企画屡にも果敢に取り組んできました。「開館記念展 20世紀彫刻の展望」をはじめとし、「イヴ・クライン」「モーリス・ルイス展」「ポロフスキー展」「アパカノヴィッチ展」「ロバート・メイプルソール展」「時間/美術」「シンディ・シヤーマン展」「リキテンスタイン 版画の宇宙」等々です。なかんづく、1987年開催の「ポロフスキー展」の入館者25,454人と1993年開催の「ロバート・メイブルソープ展」の入館者25,089人は、開館以来、1位と2位です。これからも、現代美術の愛好者の開拓に、さらに、努力してゆきます。

 より多くの方々に、当館を御利用いただくため、美術情報普及も大切です。これまで行ってきました日曜美術鑑賞会、美術館講座、ワークショップ、レファランス・ルーム、刊行物発行(展覧会図録、セルフガイド、美術館ニュースなど)、団体解説、等々は、継続して実施します。加えて、本来から新たに、木曜鑑賞ツアーを開催します。詳細に関しては、どうぞ11ページを御覧ください。また、小中学校や高等学校に教科学習や学校行事への美術鑑賞教育の組み入れを要請したり、FM放送などマスコミを活用して若い人達へ積極的に働きかける 等々の努力も重ねる所存です。

 当館は、竣工後約15年を経ました。施設設備全体の老巧化が進行しています。そのため平成10年度に、損傷の著しい施設設備の改修工事を行いました。工事期間約3ケ月。その間、開館以来初めて長期間の臨時休館となりました。快適な環境で美術鑑賞してもらえますよう、財政状況も考え合わせつつ、引き続き施設設備の改修を計画的に進めたいと念じております。

 皆さま、どうぞ、当館へ何度も、おいでください。心より御待ちいたしております。



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