シガアートスポットプロジェクトVol.1《散光/サーキュレーション》


scattered lights – circulation

滋賀県は古くから街道の街として発展してきました。その中でも、長浜は北陸と近畿をつなぐ場所として、秀吉が最初の居城として長浜城を築城するなど、経済、軍事、文化の要衝であり、現在は情緒ある古い町並みが残る街として、多くの人が訪れる場所ともなっています。

街道には多くの人や物が日々往来しますが、それらはただ通りすぎるだけではなく、その途上で出会うものが相互に影響を及ぼし合うことで、新たなものや価値が生まれます。あるものはそのまま土地に根をはり、あるものはまた街道を移動していきます。これは日々の往来の中で繰り返され、大きな循環を形作っています。

この展覧会では、街道を中心としたこの循環=サーキュレーションをテーマに、滋賀にゆかりのある3人の若手作家、河野愛、薬師川千晴、度會保浩の新作を中心に発表します。

 

【アートスポットプロジェクト】について

滋賀県立近代美術館は、リニューアル整備に向けた長期休館に入っていますが、この休館の期間を利用し、県内様々な地域で美術館の活動を展開する試みを行っています。「アートスポットプロジェクト」はその一環として、滋賀県にゆかりある若手作家を中心に紹介するとともに、開催する地域の方と交流・協働を目指すプロジェクトです。第1回目の今年は、株式会社黒壁の協賛のもと、黒壁スクエアで開催します。

●ちらしダウンロード

「《散光/サーキュレーション》ちらし2面」(1.2MB)

会期 平成30年9月22日(土)〜10月21日(日)  30日間
会場 メイン会場 滋賀県長浜市大宮町7−1森野第一ビル1F

北国街道サテライト会場 滋賀県長浜市元浜町22-37

開館時間 10:00—17:30
休館日 会期中無休
観覧料 無 料
主催 滋賀県立近代美術館
協賛 株式会社黒壁
後援 長浜市、長浜市教育委員会
出品作家 河野愛 Ai KAWANO 

河野愛はルーツである染織を「触感のあるもの」として幅広く捉え、その時々で陶や薄い布や鳥の羽根など様々な触覚のあるマテリアルを用いて、「記憶」をキーワードに作品を制作している。河野にとって、記憶とは物語ることで人と共有できるものであり、同様に他人や場所の記憶も物語らせることで、自らに投影できるものである。自分の記憶、他者の記憶、それぞれのおぼろげな輪郭線や、時を超えたシンクロ、その交錯を、「記憶の再生装置」としての繊細なインスタレーションで表現する。作品は自身と他者の重層的な記憶の表れとして、いくつもの要素が複雑に絡み合い、その境界を曖昧にしながら全体を形作っている。
今回は、骨董として流通する、かつてはさまざまな用途を持ったガラス瓶の内部を人工的に銀化させ、鏡状にした作品5点を展示する。「何か」を守る容れ物であると同時に、簡単に割れてしまうガラス瓶の内側が、鏡によって外に向けて開かれていく。そのガラスの表面は、ガラス瓶の記憶と写り込む我々やものの記憶が出会う場でもある。

【略歴】

1980年、滋賀県生まれ。2007年 、京都市立芸術大学大学院美術研究科染織専攻修了、在学中にRoyal College of Art 交換留学。大学院修了後、2017年まで、(株)電通にてアートディレクター・デザイナーとして勤務。現在、京都造形芸術大学 美術工芸学科 専任講師。

【主な展覧会】

2018年 「in the nursery 逸話ではないもの」 ギャラリー崇仁(京都)
2010年 「spin a tale/memoriom」 g3ギャラリー(東京)
2009年 「うたかたの家」 INAXギャラリー(東京)


in the nursery 逸話ではないもの展示風景 2018


in the nursery 逸話ではないもの展示風景 2018

 

薬師川千晴 Chiharu yakusigawa

薬師川千晴の作品は、一つのものを二つに分けることを軸に、平面性と立体性の双方を見据えながら制作されている。絵の具の置かれた支持体を二つ折にして転写し、対称のイメージを描き出すデカルコマニー技法を用いた作品には、逃れ得ないイメージの共通性と同時に、決定的な相違性が混在している。さらに対になったイメージは、木片の組み合わさった作品や大きく波打った蛇腹状の作品へと昇華されることで、強烈な立体性を獲得し、イメージの向こう側の空間を強く意識させる。練り込みテンペラという古典的な技法を用い、絵画史的な問題意識を踏襲しながら、その作品は薬師川の軽やかなアプローチによって新たなイメージを示している。
今回は、サーキュレーションのキーワードから、様々な色が必ず対になりながら、色とりどりに移ろってゆく「万華鏡」をイメージした新作や、右手と左手でそれぞれ異なった色を同時に描いていく新作などを展示する。

【略歴】

1989年、滋賀県生まれ。2011年、京都精華大学芸術学部造形学科洋画コース卒業。2013年、京都精華大学院芸術研究科博士前期課程芸術専攻修了。

【主な展覧会】

2018年「RAUM KOMP [ラウムコンプ] うごく空間、そこにある音」海岸通りギャラリーCASO (大阪)
2018年「retrace a pair 一対をなぞる」Gallery PARC(京都)
2015年「ハイパートニック・エイジ」京都芸術センター(京都)


《右手と左手のドローイング》 2018 個人蔵
画像提供:Gallery PARC  撮影:麥生田兵吾


《二対の絵画碑》  2016
画像提供:Gallery PARC  撮影:麥生田兵吾

 

度會保浩  Yasuhiro WATARAI

度會保浩は工芸と美術の狭間をたゆたいながら、ステンドグラスの技法を用いて、主に壺型の立体を制作している。その作品の周囲には作品の骨組みの影と透明なガラスを透過した光が散らばり、その時々の光によって異なる美しい紋様が現れる。度會が「立体的な窓」と位置付けるこれらの作品は、壺という形状の持つ内側と外側を、視覚的にはステンドグラスが穏やかにつないでいるが、我々が度會の作品を観るとき、果たして窓の向こうに広がっているのは内側なのか、外側なのか。そこでは内側と外側という概念が常にシャッフルされており、観る者の居る場所すらも問いかけている。
今回は、植物的な形態を取り入れた新作を展示する。《eagduru-shell of the plant》、植物の殻と名付けられたこの作品は、度會が長浜のいくつかの寺社を巡り、そこで出会った観音菩薩像から着想を得て制作されたものである。

【略歴】

1981年、岐阜県生まれ。2006年、大阪芸術大学大学院芸術制作研究科修士課程造形表現V(工芸)修了。2007年、滋賀県陶芸の森アーティスト・イン・レジデンス。現在、滋賀県信楽を拠点に制作を行っている。

【主な展覧会】

2018年 「Eagduru」HAGISO(東京)
2017年 「Art in the office 2017 CCC AWARDS」代官山T-SITE ガーデンギャラリー(東京)
2013年 「新時代の「やきもの」への挑戦!あれもやきもの これもやきもの 陶芸の森 アーティスト・イン・レジデンス20年の歩み 」滋賀県立陶芸の森陶芸館(滋賀)


《Eagduru-earthenware》 2015 中国美術学院博物館蔵


《Eagduru-earthenware》 2017

関連イベント ◉アーティストトーク
日時:9月22日(土)14:00〜
場所:メイン会場
出演:河野愛、薬師川千晴、度會保浩
進行:荒井保洋(滋賀県立近代美術館学芸員)入場無料・事前予約なし

◉ギャラリートーク 担当学芸員が各作品について解説します。
日時:10月13日(土)、14日(日)、20日(土)、21日(日)
各日①13:00〜②15:00〜(30分程度)
場所:メイン会場

黒壁スクエアについて  長浜市の中心市街地、旧北国街道周辺の歴史的な街並を活かした観光スポット。明治時代から「黒壁銀行」の愛称で親しまれた銀行跡を改装した黒壁ガラス館を中心に、ガラス職人の工房とショップが一体となったガラススタジオや、ギャラリー、ショップ、カフェなど多彩な施設や店舗が街なかに点在し、散策を楽しめるエリアとなっている。現在では年間約200万人が訪れ、伝統的な建築の再生を核に中心市街地の活性化につなげたモデルとしても、全国的に知られている。

今年は1989年に黒壁ガラス館がオープンして30周年を迎えることから、「黒壁三十祭」と銘打って、様々な展示やイベントなどが展開されており、本展覧会の会期中には江戸末期から現代に製造されたガラス器デザインの軌跡と魅力を紹介する「暮らしに寄り添う日本のガラス器展」が開催されるほか、10月30日からは街全体をガラスの美術館に見たてた「グラスアート展in長浜2018」などが開催される。

「黒壁」公式サイト

「暮らしに寄り添う 日本のガラス器展」サイト(会期:9月8日~11月25日)



連絡先 滋賀県立近代美術館(平日8:30〜17:15)
〒520-0807 滋賀県大津市松本1丁目2-1 滋賀県大津合同庁舎5F
Tel:077-522-2111(代) fax:077-522-2188