工芸×現代美術

2013年4月2日2013年6月23日

常設展示室2では、戦後日本とアメリカを中心とした美術作品を、約2か月ごとに展示替えを行いながら紹介しています。今回は「工芸×現代美術」と題して、陶、染織、紙工芸など伝統的な工芸技法を用いて斬新な造形を制作している、現代日本の作家たちの精華をご紹介いたします。

陶器の郷・甲賀市信楽町在住の奥田博土(おくだ・ひろむ)は、伝統的なロクロによる成形で生み出した器状の回転体を、縦に切断して器としての役に立たない物体に変えてから焼成し、枯れ木などの付属物を加えて金属ボルトで互いに接合し、巨大なオブジェに仕上げています。ロクロ造形の手わざの美とプリミティヴで野性的な造形感覚の融合が見どころです。秋山陽(あきやま・よう)と星野曉(ほしの・さとる)はともに、焼成段階で陶器の表面に炭素の微粒子を吸着させ黒く発色させる「黒陶」の技法を用いた作品を制作しています。秋山は粘土が固まる前にガスバーナーで土の表面をあぶり、ウロコのような亀裂を生じさせることで、大地の感触や生命感を喚起させる力強い造形を生み出しました。一方、星野は柔らかい粘土の塊まりに手を当てて指で粘土をほじくり、掴み出し、盛り上げることで、作者の身体と土との格闘の痕跡を生々しく強烈に造形化しました。また中村康平(なかむら・こうへい)は釉薬を巧みに用いて、悠久の時の流れを経た生物の化石か人体標本の一部、あるいは錆びて廃棄された機械を連想させる、小型ながら重厚な雰囲気のオブジェを制作しています。

タペストリー(室内装飾用の壁掛け織物)作家の朝倉美津子(あさくら・みつこ)は手染めと手織りにこだわり、日本の伝統的な帯や折り紙などの要素も取り入れて、シンプルで幾何学的な現代的デザインでありながら、伝統の暖かみを感じさせる作品を作り続けています。大手裕子(おおて・ゆうこ)は絣(かすり)文様を利用した二重(ふたえ)織りの技法を用いて帯状の布を織り上げ、それらを天井から浮遊するように吊るして作品を作ります。可愛らしいペンギンの柄やビビッドな色彩に女性らしい感性が感じられます。また本田昌史(ほんだ・まさし)はコンピュータグラフィックを駆使して幾何学的でオプ・アート的な奇妙なパターンを作り上げ、それを写真やイラストと組み合わせて、孔版技法の一種であるスクリーンプリントで巨大な布に染め抜いて作品化しています。頭部の無い人体の断片はハイテクの波に翻弄される現代人の姿をシニカルに表現したものでしょうか。

朝倉俊介(あさくら・しゅんすけ)と角喜代則(かど・きよのり)は、ともに越前和紙の産地、福井県越前市今立で創作活動を続けている作家です。朝倉は段ボールを支持体にして和紙の張り子の要領でタケノコかキノコのような生命感溢れる物体を作り、漆や柿渋で表面を塗装して自然の温もりを感じさせる作品に仕上げています。一方の角も固い紙管などを支持体に、和紙や新聞紙を幾重にも貼り重ねて生物的で大胆なフォルムの作品を作っていますが、作品の表面をグラインダーで削り、バーナーであぶって、貼り重ねた紙をまるで木目のような模様に変えているところに非凡な独自性があります。陶芸作家の西村陽平(にしむら・ようへい)は、陶器を焼く窯で本や雑誌を焼成して書籍の形のままの白い灰を残すというコンセプチュアルな作品も作っています。今回の展示作品「時間と記憶」は様々な雑誌の灰を瓶詰めの標本にして古い標本ケースに収めたもので、見る者に遥か悠久の時間の果て、人類の文化の行く末に思いを馳せさせるような観念性の強い作品です。

●現代美術部門

作者名 タイトル 制作年 素材・技法

《工芸×現代美術》

西村 陽平 時間と記憶 1996 ガラスケース、ガラス瓶、本、雑誌
秋山陽 Semiplan Series 881 1988 黒陶
奥田 博士 無題4 1988 陶、木
中村 康平 記憶気管I 1988
中村 康平 記憶気管II 1988
中村 康平 記憶気管III 1988
中村 康平 記憶気管IV 1988
中村 康平 記憶気管V 1988
星野 曉 背後の輪郭II 1990 黒陶
星野 曉 背後の輪郭III 1990 黒陶
星野 曉 背後の輪郭IV 1990 黒陶
本田 昌史 Fetish-OHW 1992 綿布・顔料
朝倉 美津子 変化と連続体 1992 麻・綿ほか
大手 裕子 Close to Cloth’92 1992 綿・ジュート
朝倉 俊輔 プラント 1996 ダンボ-ル紙、和紙、布、柿渋
角 喜代則 森の妖精 1993 紙管、和紙、樹脂