日本絵画 組み合わせの美

2012年4月14日2012年6月3日

Beauty of Combination from Japanese Style Painting

掛け軸・絵巻物・屏風・襖絵…と、実にバラエティ豊かな形態を誇る日本の絵画。さらにそれらをよく見ていくと、2点・3点、あるいはそれ以上の点数がセットになり「組み合わせ」て鑑賞する作品が多いことに気づかされます。

たとえば、岸竹堂(きしちくどう)(1826-1897)の屏風「保津峡図」(1892年)のように、2枚の屏風を左右合わせて鑑賞することで、まるで眼前に迫るような荒々しい保津川の流れと雄大な渓谷のパノラマが出現したり、北野恒富(きたのつねとみ)(1880-1947)の対で制作された美人画「暖か」「鏡の前」(1915年)のように、着物の色・女性のポーズとも異なる2面を並べることで、色彩や構図的な対比の面白さはもちろん、鑑賞者にさまざまなドラマを感じさせたりと、「組み合わせ」の作品には1つの画面で完結する作品とはまた異なる表現や創意工夫を見いだすことができると言えます。

また、季節の移ろいを感じさせる四季や十二ヶ月、近江八景のような景勝を描くために、何枚・何面もの絵が「組み合わせ」られている場合は、それぞれの画面に個性を持たせながらも、いかに全体のバランスを取って1つの作品としてまとめられているかがひとつの注目ポイントと言えるでしょう。

そんな「組み合わせ」の面白さにスポットを当てた本展では、当館所蔵の屏風や掛軸を中心に「一双」「一対」「揃い」など、1点だけでは完結しない日本絵画の作品24点をご紹介します。

本展が、日本絵画の持つユニークな形態と表現に改めて注目していただく機会になれば幸いです。

会  期 2012年 4月14日(土)-6月3日(日)
休 館 日 毎週月曜日 (ただし4月30日(月)は開館、翌5月1日(火)は休館)
観 覧 料

一 般 750円(550円) 高大生 500円(400円) 小中生 300円(250円)
( )内は前売および20名以上の団体料金
ローソンチケットでお買い求めの前売券は、当館総合受付(チケットカウンター)にて観覧券とお引き換え下さい。
ローソンチケットLコード/56084

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主  催 滋賀県立近代美術館、京都新聞社
後  援 滋賀県教育委員会、NHK大津放送局、BBCびわ湖放送
展示内容 館蔵品の中から屏風・掛軸を中心に 日本絵画 24点
代表作品 北野恒富「暖か」「鏡の前」、 岸竹堂「保津峡図」(右隻・左隻)
池田遙邨「湖畔残春」(右隻・左隻)、 大林千萬樹「街道」(右隻・左隻)
山元春挙「富士二題」、 野村文挙「近江八景図」(8点組)  など
関連事業 ○ギャラリートーク
 展覧会場において、当館学芸員が作品解説をおこないます。
 日 時:4月14日(土)・15日(日)・22日(日) 各日とも13:00〜13:45
 参加費:無料(要観覧券)
 ※会期中、ギャラリートーク開催日以外の開館日は、13:00より美術館サポーターによる
  鑑賞ツアー(無料・要観覧券)を実施しています。

たいけんびじゅつかん 日本画を描こう
 小中学生とその保護者対象  事前申込制
 日 時:5月20日(日)  13:30〜16:30
 会 場:当館ワークショップルーム
 講 師:当館嘱託職員  材料費:300円(保護者の方は別途観覧券も必要です)

名画でびっくりコラージュ
 日 時:5月3日(木・祝)・4日(金・祝)・5日(土・祝)・6日(日)
     いずれも10:00〜15:00(この時間内ならいつでも参加できます。
     所要時間約20分)
 会 場:当館エントランスホール  参加費:無料

滋賀県立近代美術館友の会協賛事業 「近江由縁落語会(おうみゆかりのらくごかい)」
 本展覧会に出品される景勝図「近江八景」にちなみ、落語「近江八景」ほか、
 滋賀県ゆかりのお話などをお届けする落語会です。
 日 時:5月13日(日) 14:00〜15:00
 会 場:ふらみんご亭(当館講堂) 
 出 演:林家 染雀  参加費:無料  定員:150名
 ※事前申込は不要ですが、混雑が予想されるため当日12時より整理券を配付します

●出品作品リスト

No. 作者 作品名 制作年 形状

連続する画面─パノラマの美

1 横井金谷 吉野熊野真景図 文化3年(1806) 六曲一双
2 塩川文麟 近江八景 安政5年(1858) 六曲一双
3 幸野楳嶺 群魚図 (個人蔵・本館寄託) 明治9年(1876) 六曲一双
4 岸竹堂 保津峡図 明治25年(1892) 六曲一双
5 山元春挙 雪松図 明治40年代 六曲一双
6 庄田鶴友 耶馬溪之朝 明治44年(1911) 六曲一双
7 池田遥邨 湖畔残春 大正9年(1920) 六曲一双
8 竹内栖鳳 柳下追牛図 二幅
9 大林千萬樹 街道 大正初期 六曲一双

競い合う構図と色─対比の美

10 岸連山 龍虎図 嘉永2年(1849) 六曲一双
11 中島来章 武陵桃源図 19世紀 六曲一双
12 岸竹堂 鉄拐蝦蟇図 明治21年(1888) 二幅
13 下村観山 鵜鴎図 明治34年(1901) 六曲一双
14 木村武山 花木図 大正はじめ 二曲一双
15 北野恒富 暖か・鏡の前 大正4年(1915) 二面
16 山元春挙 富士二題 昭和4年(1929) 二幅
- 山元春挙 富士二題 画稿 昭和4年(1929) 二幅
17 冨田溪仙 風神雷神 昭和4年(1929)頃 二曲一双
18 沢宏靭 湖北1・2・3 昭和56年(1981) 三面

「揃い」の愉悦─セットの美

19 岡本豊彦 近江八景図 19世紀前半 四軸
20 野村文挙 近江八景図 明治32年(1899) 八幅
21 伊東深水 近江八景 大正6-7(1917-18) 八枚
22 中島来章 十二ヶ月図 19世紀 六曲一双・押絵貼<
23 小茂田青樹 四季草花図(夏・冬) 大正8年(1919) 六曲一双
24 小倉遊亀 花三題 昭和60年(1985) 三面

(図版1)
北野恒富「鏡の前」
1915年(大正4年) 絹本著色
185.6cm×112.0cm
第2回再興院展出品作

 

 

 

 

 

 

(図版2)
北野恒富「暖か」
1915年(大正4年) 絹本著色
185.6cm×112.0cm
第9回文展出品作

 

 

 

 

 

 

院展などで活躍した大阪の美人画家、北野恒富が同じ年に描き、別々の展覧会に出品した2点の作品。よく見ると画面の要素が共通しているうえに、「座像」と「立像」、「赤い着物に黒い帯」と「黒い着物に赤い帯」など、対になることを意識して描かれていることがわかります。

(図版3)
岸竹堂「保津峡図」(右隻)
1892年(明治25年) 紙本著色・屏風装六曲一双のうち
(各)153.0cm×359.0cm

 

 

(図版4)
岸竹堂「保津峡図」(左隻)
1892年(明治25年) 紙本著色・屏風装六曲一双のうち
(各)153.0cm×359.0cm

 

 

彦根出身で明治期に活躍した近代京都画壇の先駆者・岸竹堂が、京都の保津峡と筏流しをモチーフに描いた一双屏風。金泥による琳派風の装飾的な背景と、写生を駆使した水墨画風の写実的な描写との対比が目を引きます。
右隻は向かって右から左に、左隻は左から右に向かって川が流れていて、両者はひとつに繋がっていません。もしかしたら屏風を二の字型に平行させて立て、その間に鑑賞者が入って、あたかも川の流れの中にいるような臨場感を楽しんだのでは?とも考えられています。