日本の前衛

2012年1月21日2012年4月1日

常設展示室2では、戦後日本とアメリカを中心とした美術作品を、約2か月ごとに展示替えを行いながら紹介しています。今回は企画展示「近代の洋画・響き合う美─兵庫県立美術館名品展─」の開催にちなみ、「日本の前衛」と題して、戦前の前衛洋画から戦後の現代平面芸術へと繋がる流れをご紹介いたします。

戦前に前衛絵画を模索していた若い画家たちの揺籃となったのは、1938(昭和13)年に藤田嗣治と東郷青児を顧問に迎えて結成された「九室会」でした。ここに集った山口長男、斎藤義重、吉原治良ら戦前のパイオニアたちは、戦後もそれぞれ独自の造形を追求し、日本現代美術界の基礎を築きました。兵庫県芦屋市で画塾を開いていた吉原治良は、1954(昭和29)年に若手作家たちと「具体美術協会」を結成。「未だ誰も試みたことのない方法で描け」を旗印にエネルギッシュな活動を繰り広げました。そこからは足で絵を描く白髪一雄、ドロドロに溶いた絵具を流し掛けする元永定正、絵具を垂らしながら走るリモコン自動車に描かせる金山明、カラフルな無数の電球で覆われた電飾服のパフォーマンスとそれを元にした絵画で知られる田中敦子など、多くの作家たちが巣立ち、その活動はフランスのアンフォルメル(非定型の意)運動の主導者である評論家ミシェル・タピエによって、広く世界へと紹介されました。

その一方で今井俊満、堂本尚郎ら、渡仏してアンフォルメル運動に身を投じた日本人画家もおり、1960年代には既に日本の現代美術は、世界の動向と無関係なものではなくなっていました。少女時代の幻視体験を元に無限増殖する斑点のイメージを生み出す草間彌生、60年代ポップ・アートの旋風の中で浮世絵を元にした作品や、廃材で作った奇怪な女ライダーの立体作品を作って注目を浴びた篠原有司男、極度に単純化された禁欲的な作風でミニマル・アート(最小限芸術)の代表作家となった桑山忠明、そして70年代のコンセプチュアル・アート(概念芸術)を代表する存在である河原温や荒川修作らは、いずれもニューヨークを拠点に活動している作家たちです。また道路標識をヒントにした明快で単純な抽象画を描いた菅井汲、神話的イメージの半具象絵画を描く黒田アキはいずれも、パリを活動の拠点に定めました。

実態の無い影だけを描く高松次郎、紫と白を基調とした鮮烈な抽象絵画を描く中西夏之は、いずれも60年代にパフォーマンス等の実験的な活動を行い、70年代以降絵画に回帰した作家たちです。韓国出身の李禹煥はスタンプの要領で点を順序よく描き、画面の中に時間を封じ込めたようなユニークな作品を作りました。現在活躍中の気鋭の作家である岡田修二と伊庭靖子はともに、写真と見まがうフォト・リアリズムの技法で制作している画家で、見ることの意味について深く考えさせてくれます。

●現代美術部門

作者名 タイトル 制作年 素材・技法

《日本の前衛》

村井 正誠 考える男 1954年 油彩・画布・額装
斉藤 義重 作品12 1961年 油彩・合板
山口 長男 安定する四角 1958年 油彩・板
吉原 治良 無題71 1971年 アクリル・画布
今井 俊満 東方の光 1958年 油彩・画布
堂本 尚郎 アンスタンタネイテ 1957年 油彩・画布
元永 定正 作品 1961年 油彩・画布
白髪 一雄 大金剛神 1963年 油彩・画布
田中 敦子 1965年 油彩・画布
金山 明 Work1961 1961年 油彩・画布
草間 彌生 Interminable Net No.2 1959年 油彩・画布
管井 汲 まるい森 1968年 油彩・画布
篠原 有司男 夢見るおいらん 1966年 油彩・画布、アクリル板
篠原 有司男 モ-タ-サイクル・戦士 1984年 ミクストメディア(カ-ドボ-ド、アクリル、プラスティック、ポリエステル樹脂、鉄)
高松 次郎 影(母子) 1964年 油彩・板
中西 夏之 ア-ク・エリプス-E 1981年 油彩・画布
桑山 忠明 無題 1975年 メタリック・ペイント・画布
山田 正亮 Work D-274 1978年 油彩・画布
河原 温 27.Mar.89 1989年 アクリル・画布
荒川 修作 ふち(Blink) 1971-1972年 油彩・画布
宇佐美 圭司 遊星を追う 1963年 油彩・画布
李 禹煥 点より 1976年 岩彩・画布
黒田 アキ RAKKA(落下) 1990年 アクリル・画布
岡田 修二 Take#11 1998年 油彩・画布
伊庭 靖子 Untitled 2007年 油彩・カンヴァス