平成22年度 友の会 海外美術鑑賞旅行記

 

平成22年度の友の会海外美術鑑賞旅行は、4月~6月にかけて当館で開催された展覧会『ドゥシャン・カーライの超絶絵本とブラチスラヴァの作家たち』に関連して、“ドゥシャン・カーライの軌跡を訪ねて”を実施しました。カーライ氏の出身国であるスロヴァキアをはじめ、チェコ、オーストリアの3国をめぐる旅に17名の会員の方々が参加されました。今井ユミ様より旅行記をお寄せいただきましたので、ご紹介させていただきます。

 

したたり落ちる黄葉の季節に(中欧の旅)   友の会会員 今井ユミ

10月12日、ブラチスラヴァのホテルに着いたのは、出発してから23時間後。時差の関係でまだ12日。初日を心に刻みたくて夜のホテル前でスケッチを始めた。前日まで半そでで過ごしていた私。8度の気温に気分が引き締まる。

中世のような赤茶色の家並みや古城が次々とわき出てくる。カーライさんたちが設立に協力したというビビアナ財団の絵本図書館もそうした旧市街地の一角にあった。元アパートだった建物には10万冊の絵本があり、いくつかの部屋では、作家の作品に触発された10人ほどの子どもたちが複数の先生たちと制作を楽しんでいた。作品は、森や海などのテーマごとに展示されて、作ることと見ることが一体となった活動が保証されている。京都の小学校で同じような試みをしてきた私は、この少人数と常設の展示空間があることをうらやましく思った。京都で種まきしなければと思う。

4日目、プラハからカーライさんの展覧会が開かれる町へ向かう。バスで2時間。野を抜け、牧場の側を通り、山道をたどる。白樺など沿道の木々のしたたり落ちるような黄葉。この地の画家クリムトの「接吻」に描かれた草花のしたたり落ちるような表現は、この環境から生まれてきたものだと強く思う。カーライさんが描いた切手発売を記念して開かれた展覧会は、赤ずきんちゃんが出てきそうな森かげの小さな美術館だった。ムーミンの物語に出てきそうな奥さんと共に、カーライさんが、幼少時の写真やそのころの絵をプロジェクターで見せながら画家としての始まりをにこやかに語ってくださった。展覧会のオープニングパーティーでは、市長さんやら郵便局長さんの挨拶の後、黒いあごひげの男性ピアニストの演奏に合わせて男性歌手の朗々たる歌声が響く。なんて贅沢な空間。

9日間の旅は、美術館と古城と古都めぐりがぎっしり詰まっていたけれど、私にとっての最高の出会いは、ベルヴェデーレ宮殿のクリムトの「接吻」。畳2枚分の大きさで迫ってくる。画面下方の垂れ下がる花々の隙間が塗りつぶされず白いままであることを発見。だからこそ、花は明るく輝いて見えるのだ。画集ではけして分からなかったこと。私は、クリムトに会いにきたのだ。本物にであう旅は、最高の収穫を与えてくれた。

 

ブラチスラヴァ ホテル前にてスケッチ

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゥシャン・カーライ夫妻とともに (写真提供:友の会会員 佐橋浩)